August 3, 2010/March 14, 2018 ( 最終修正 )
多面体にまつわる幾何学
— オイラーの多面体定理を中心に —
和久井道久
問題 次の立体図形が共通に持っている特徴にはどんなものがあるだろうか?その特徴を挙 げてみよう。
(CP1) 有限個の多角形に囲まれていて、 面、 辺、 頂点の3要素を有している。 ( 面とは、そ
の立体を構成している各多角形のころであり、辺、頂点とは、それぞれ各多角形の 辺、頂点のことである。 )
(CP2) 2つの面が共有点を持つ場合には、その共通部分は1つの辺または1つの頂点で
ある。
(CP3) どの多角形についても、その中の各辺はある別の多角形の辺にもなっていて、その
ような多角形は各辺に対してただ 1 つ存在する。
(CP4) 1つに繋がっている。すなわち、任意の2つの頂点に対して、一方の頂点から他方
の頂点へ至る、いくつかの辺からなる道が存在する。
(CP5) 凹んだ部分がない。すなわち、その立体図形の表面および内部から任意に2点を
とったとき、その2点を端点とする線分はその立体図形の表面および内部にある。
1
(CP6) 各頂点の十分小さなまわりだけ見ると、
その頂点を頂点とする凸多角錐 (=
底面が凸多角形の形をした錐体 ) の形をしている。
上記の特徴に加えて、上の立体図形は次の性質も持っている ことがわかる。
(EF) ( 頂点の個数 ) − ( 辺の個数 ) + ( 面の個数 ) = 2 実際に、確かめてみよう。
問題 次の表を完成させなさい。
立体図形 頂点の個数 辺の個数 面の個数 3角錐 ( 正4面体 )
4角錐
5角錐
3角柱
4角柱 ( 正6面体 ) 5角柱 双3角錐 双4角錐柱
正 12 面体
一般に、 (CP1),. . . , (CP4) を満たす立体図形を ( 連結な ) 多面体と呼び、 (CP1),. . . , (CP6) を満たす立体図形を凸多面体と呼ぶ ( 注: (CP5) が成り立てば、 (CP4) は自動的に成り立 つ ) 。等式 (EF) は、上記の9種類について成り立つばかりでなく、任意の凸多面体に対し て成り立つ。等式 (EF) をオイラーの多面体公式と呼ぶ。この講義では、このオイラーの多 面体公式を導き、その応用を紹介する。オイラーの多面体公式の発見と証明の歴史に関し ては [5; p.66–67] を、多面体の種類と名称については [6] を参照されたい。
§1. 球面の表面積とオイラーの多面体定理
ここでは、半径 r の球面の表面積が 4πr
2で与えられることを、 [1] に沿って、初等的に 証明する。さらに、それを用いて多面体に対するオイラーの公式を導く。この証明方法は 1794 年にルジャンドルによって与えられた。最後に、少ない予備知識で理解可能な、平面 グラフを利用した別証明も与える。
A
N
B
S O
M M´
S を半径 r の球面とする。 S 上に2点 N, S を S の直
径の端点となるようにとる。球面 S は線分 NS の回り
に半円を1回転させることにより、得られる。線分 NS
に直交する S の直径 AB をとる。このとき、2点 A, N
を結んで得られる 1/4- 円 AN
⌢上に、 A, N 以外の点 M
をとる。このとき、弧 AM
⌢を直径 NS のまわりに1回
転して得られる曲面の面積 S
Mは次の公式で与えられる。
補題 1-1 M
′を点 M を直径 NS へ下ろした垂線の足とする。 O を球面の中心とし、 h = OM
′とおく。このとき、 S
M= 2πrh となる。
( 証明 )
A
N
O B
M M´
P
0=
P
n=
P
1P
2P
1P ´
2´
……
= P ´
n= P ´
0上の補題を示す。弧 AM
⌢を n 等分し、
その分点を順に
P
0= A, P
1, · · · , P
n−1, P
n= M とする。これらの点を直径 NS へ下ろした 垂線の足を順に
P
′0, P
′1, · · · , P
′n−1, P
′nとする。 P
′0= O ( 球面の中心 ) である。このとき、 n 個の弦 P
0P
1, P
1P
2, · · · , P
n−1P
nを NS の回りに1回転させて得られる曲面の面積をそれぞれ T
1, T
2, · · · , T
nとおくと、
T
1+ T
2+ · · · + T
nは S
Mの近似値を与えていると考えられる。実際、 n を大きくすればす るほど、和 T
1+ T
2+ · · · + T
nは S
Mの値に近づいていくと考えられる。
P
iP ´
iP
i -1P ´´
i -1T
iを計算しよう。 T
iは底面が半径 P
i−1P
′i−1の
円であるような直円錐から、底面に平行で点 P
′iを通る平面で切って得られる直円錐を取り除いた、
直円錐台の側面積に等しい。したがって、
(1.1) T
i= π( P
i−1P
′i−1+ P
iP
′i) P
i−1P
iが成り立つ。
∵ )
P
iP ´
iP
i -1P ´
i -1Q
H
h
c ℓ
a
b
a = P
i−1P
′i−1, b = P
iP
′i, c = P
i−1P
i, ℓ = P
′iP
′i−1とおく。また、 2 直線 P
i−1P
i, P
′iP
′i−1の交点を Q と おき、 h = QP
′i−1とおく。また、右図のように点 H を とる。
底面の円の半径が r で、高さが h の直円錐の側面積 S は、半径が √
h
2+ r
2で、弧の長さが 2πr の扇形の 面積に等しいから、 π(h
2+ r
2) : S = 2π √
h
2+ r
2: 2πr を満たす。これを解いて、
S = πr √
h
2+ r
2を得る。
h r
πr
h2+r2
この公式を用いて、
T
i= πb √
h
2+ b
2− πa √
(h − ℓ)
2+ a
2を得る。 △QP
iP
′i∽ △QP
i−1P
′i−1であるから、 Q
iP
′i=
abh であることがわかる。故 に、 h = ℓ +
abh となる。これを解いて、 ℓ =
b−abh とわかる。故に、
c = √
(b − a)
2+ ℓ
2=
√
(b − a)
2+ (b − a)
2b
2h
2= b − a b
√ b
2+ h
2を得る。また、
√ (h − ℓ)
2+ a
2=
√ a
2b
2h
2+ a
2= a b
√ h
2+ b
2であるから、
T
i= π b
2− a
2b
√
h
2+ b
2= π(b + a)c
と表される。 □
R
iを線分 P
i−1P
iの中点とし、それを NS に下ろした垂線の足を R
′iとする。
(1.2) P
i−1P
′i−1+ P
iP
′i= 2 R
iR
′iが成り立つ。
∵ )
P i P ´ i P i
-1 P ´ i
-1
Q
R i R ´ i
点 Q を2直線 P
iP
i−1, P
′iP
′i−1の交点とす る。 △ QP
iP
′i∽ △ QR
iR
′i∽ △ QP
i−1P
′i−1で あるから、
QP
i: P
iP
′i= QR
i: R
iR
′i, QP
i−1: P
i−1P
′i−1= QR
i: R
iR
′iが成り立つ。よって、
{ P
iP
′i· QR
i= QP
i· R
iR
′i,
P
i−1P
′i−1· QR
i= QP
i−1· R
iR
′iを得る。両辺の和をとると、
(P
iP
′i+ P
i−1P
′i−1)QR
i= R
iR
′i(QP
i+ QP
i−1)
= R
iR
′i((QR
i− P
iR
i) + (QR
i+ R
iP
i−1))
= 2R
iR
′i· QR
iとなる。故に、 (1.2) が成り立つ。 □
P i P ´ i
P i
-1 P ´ i
-1
O R i R ´ i
H
また、 P
iを P
i−1P
′i−1に下ろした垂線の足を H と おくと、 ∠R
iP
i−1P
′i−1= ∠P
′i−1OR
iであるから ( 右 図参照 ) 、 △ P
iP
i−1H ∽ △ R
iOR
′iとなる。したがっ て、 P
i−1P
i: P
iH = OR
i: R
iR
′i, すなわち、
(1.3) P
iH · OR
i= P
i−1P
i· R
iR
′iを得る。 P
iH = P
′i−1P
′iであるから、 (1.2), (1.3) を (1.1) に代入して、
(1.4) T
i= 2π P
′i−1P
′i· OR
iを得る。 △ OP
iR
iに三平方の定理を適用して、
(1.5) OR
i=
√ r
2−
( P
i−1P
i2 )
2となることに注意すると、 OR
iは i によらないことがわかる。そこで、 ℓ = OR
iとおくと、
(1.4) より
T
1+ · · · + T
n= 2πℓ( P
′0P
′1+ · · · + P
′n−1P
′n) = 2πℓ P
′0P
′n= 2πℓ OM
′= 2πℓh となることがわかる。ここで、 n を限りなく大きくしていくと、 (1.5) により ℓ = OR
iは球 の半径 r に限りなく近づいていくから、 T
1+ · · · + T
nは 2πrh の値に限りなく近づいてい
く。こうして、補題 1-1 の公式が導かれた。 □
点 M を弧 AN
⌢に沿って点 N に近づけていくと、 h = OM
′は球の半径 r に近づいてい くから、 S
Mは 2πr
2に近づいていく。一方、点 M を弧 AN
⌢に沿って点 N に近づけてい くと、 S
Mは球面 S の上半球の部分の表面積に近づいていく。こうして、球面 S の上半球 の部分の表面積は 2πr
2であり、したがって、球面 S の表面積は 2 × 2πr
2= 4πr
2である ことが証明された。すなわち、次が示された。
定理 1-2 半径 r の球面の表面積は 4πr
2である。
球面 S 上の2点 P, Q は S の直径の端点にはなっていないとする。すると、 P, Q を通る
S 上の大円 (= S の中心を通る平面と S との交線が作る円 ) がただ1つ存在する。実際、 O
を S の中心とするとき、 P, Q は S の直径の端点ではないから、3点 O, P, Q を通る平面
が定まる。その平面と球面 S との交線として得られる大円は P, Q を通る。逆に、 P, Q を 通る S 上の大円は、3点 O, P, Q を通る平面と S との交線になる。したがって、 P, Q を 通る S 上の大円はただ1つである。
P, Q を通る S 上の大円を、2点 P, Q で2つの弧に分けたとき、長さの短い方の弧を劣 弧といい、長い方を優弧という。
A
B C
球面 S 上の3点 A, B, C はどの2点も球の直径の 端点にはなっていないとする。すると、球面 S 上に A, B を通る大円、 B, C を通る大円、 C, A を通る大 円という3つの大円を引くことができる。このとき、
劣弧 AB,
⌢BC,
⌢CA
⌢によって囲まれる S 上の図形を 球面三角形 ABC という。さらに、3点 A, B, C を この球面三角形の頂点といい、劣弧 AB,
⌢⌢
BC,
⌢
CA を この球面三角形の辺という。
A
B
C
球面三角形 ABC において、頂点 A の頂角とは、 A, B を通る大円 C
1( を含む平面 ) と A, C を通る大円 C
2( を 含む平面 ) とのなす角のことをいう。厳密に言えば、2 つの大円 ( を含む平面 ) のなす角は2つあるが、以下で は小さい方 ( つまり、 0
◦と 180
◦との間にある方 ) を採 用する。
2つの大円の半円周によって囲まれた球面上の小さ い方の部分を月形という。
α
補題 1-3 半径 r の球面における月形の頂角の大きさが α ( 単位はラジアン ) であるとき、
その月形の面積は 2αr
2で与えられる。
( 証明 )
( 求める月形の面積 ) : ( 球面の表面積 ) = α : 2π
であるから、
( 求める月形の面積 ) = 1
2π α × ( 球面の表面積 ) = 1
2π α × 4πr
2= 2αr
2である。 □
定理 1-4 半径 r の球面において、球面三角形 ABC を考える。頂点 A, B, C の頂角をそ
れぞれ α, β, γ とおくと、球面三角形 ABC の面積 S(ABC) は次の公式で与えられる。
S(ABC) = (α + β + γ − π)r
2. ( 証明 )
A
′, B
′, C
′をそれぞれ A, B, C の対蹠点とする。
A
B C
A A ´ A A C´ B´
2つの球面三角形 ABC, A
′BC は頂角が α の月 形であるから、補題 1-3 により、
( * 1) S(ABC) + S(A
′BC) = 2αr
2である。同様にして、
( * 2) S(ABC) + S(AB
′C) = 2βr
2( * 3) S(ABC) + S(ABC
′) = 2γr
2を得る。 ( * 1), ( * 2), ( * 3) の辺々の和をとって、
(1.6) 3S(ABC) + S(A
′BC) + S(AB
′C) + S(ABC
′) = 2(α + β + γ)r
2が得られる。一方、4つの球面三角形 ABC, A
′BC, AB
′C, A
′B
′C は球面を大円 AB で 切ったときの半球をなすから、
S(ABC) + S(A
′BC) + S(AB
′C) + S(A
′B
′C) = 2πr
2となる。ここで、球面三角形 A
′B
′C と球面三角形 ABC
′とは球面の中心に関して点対称で あるから、面積は等しい、すなわち、 S(A
′B
′C) = S(ABC
′) である。こうして、
(1.7) S(ABC) + S(A
′BC) + S(AB
′C) + S(ABC
′) = 2πr
2を得る。2つの等式 (1.6), (1.7) から、
2S(ABC) + 2πr
2= 2(α + β + γ )r
2を得る。これを整理すれば、定理の等式となる。 □
球面上の有限個の大円の劣弧で囲まれた図形を球面多角形と呼ぶ。その球面多角形が n
個の劣弧で囲まれているとき、球面 n 角形と呼ぶ。球面 n 角形 P の内部または周上にあ
る任意の2点 P, Q は直径の端点ではなく、その2点を端点とする劣弧 PQ
⌢が P の内部ま
たは周上にあるとき、 P は球面凸 n 角形であると呼ばれる。球面三角形は常に球面凸 3 角
形であるが、 n ≥ 4 に対しては球面 n 角形は必ずしも球面凸 n 角形ではない。
A
B
C
A
B
C D
D
球面4角形(凸ではない) 球面凸4角形
頂点が A
1, · · · , A
nであるような球面凸 n 角形の面積を S(A
1· · · A
n) とするとき、定理 1-4 から次が得られる。
系 1-5 半径 r の球面上の頂点が A
1, · · · , A
nであるような球面凸 n 角形の面積は、頂点 A
i(i = 1, · · · , n) の頂角を α
iとすると、次の公式で与えられる。
S(A
1· · · A
n) = (α
1+ · · · + α
n− (n − 2)π)r
2. ( 証明 )
i = 3, 4, · · · , n に対して、2頂点 A
1, A
iを劣弧 A
⌢1A
iで結ぶと、与えられている球面凸 n 角形 P は n − 2 個の球面三角形 A
1A
iA
i+1(i = 2, · · · , n − 1) に分割される。球面三角 形 A
1A
iA
i+1(i = 2, · · · , n − 1) の頂点 A
1の頂角を α
1,iとし、頂点 A
iの頂角を β
i, 頂点 A
i+1の頂角を γ
i+1とおくと、
α
1= α
1,2+ α
1,3+ · · · + α
1,n−1,
α
2= β
2, α
3= γ
3+ β
3, · · · , α
n−1= γ
n−1+ β
n−1, α
n= γ
nであることがわかる。定理 1-4 より、 S(A
1A
iA
i+1) = (α
1,i+ β
i+ γ
i+1− π)r
2であるから、
S(A
1· · · A
n) = S(A
1A
2A
3) + S(A
1A
3A
4) + · · · + S(A
1A
n−1A
n)
= (α
1,2+ β
2+ γ
3− π)r
2+ (α
1,3+ β
3+ γ
4− π)r
2+ · · · + (α
1,n−1+ β
n−1+ γ
n− π)r
2= (α
1+ α
2+ α
3+ · · · + α
n− (n − 2)π)r
2を得る。 □
オイラーの多面体定理を証明しよう。
定理 1-6 ( オイラーの多面体定理 ) T を任意の凸多面体とする。 T の頂点の個数を v(T ), 辺の個数を e(T), 面の個数を f (T ) とおくと、
v(T ) − e(T ) + f (T ) = 2 が成り立つ。
( 証明 )
A
C B
A´
´ B
C´
凸 n 面体 T の内部に1点 O をとり、 O を中心とする球面 S を、 S が T の内部に含ま れるくらい、小さくとる。 S の半径を r とする。 T の各点 P に対して、 O から P へ向か う半直線は球面 S と1点で交わる。その交点を P
′とおく。このとき、 T の各辺 AB は、
球面 S 上の劣弧 A
⌢′B
′に対応する。実際、劣弧 A
⌢′B
′は三角形 OAB による S の切り口で あるが、それは3点 O, A, B を通る平面による S の切り口として現れる大円上にあるから である。このことから、 T の各面は球面 S 上の球面多角形に対応していることがわかる。
しかも、この球面多角形は、 T が凸多面体であることから、球面凸角形になっていること がわかる。 T の各面を S 上に写すことによって、球面 S は有限個の球面凸角形によって
「きれいに」分割される。 ( 「きれいに」というのは、この分割において2つの面が辺または 頂点以外で交わることはないことを意味している。このことは、 T は凸多面体なので、 T の点と S の点が対応 P ↔ P
′によって1対1に対応することから従う。 )
今、上記のようにして、 S が f = f (T ) 個の球面凸角形 P
1, · · · , P
fに分割されたとしょ う。各 P
iの頂点を A
′i1, · · · , A
′iniとし、それぞれの頂角を α
i1, · · · , α
iniとおくと、系 1-5 より、
S(P
i) = (α
i1+ · · · + α
ini− (n
i− 2)π)r
2となる。よって、
(1.8)
S(P
1) + · · · + S(P
f) = (α
11+ · · · + α
1n1− (n
1− 2)π)r
2+ (α
21+ · · · + α
2n2− (n
2− 2)π)r
2+ · · · + (α
f1+ · · · + α
f nf− (n
f− 2)π)r
2となる。ここで、球面凸角形 P
1, · · · , P
fによる分割において、 S 上には v = v(T ) 個の頂 点が現れることに注意する。 S の各頂点 A
′において、 A
′に集まる球面凸角形たちの、頂 点 A
′の頂角の総和は 2π であるから、
α
11+ · · · + α
1n1+ · · · + α
f1+ · · · + α
f nf= 2πv
となる。また、 S(P
1) + · · · + S(P
f) = (S の表面積 ) = 4πr
2であるから、先の等式 (1.8) は 4 = 2v − (n
1− 2) · · · − (n
f− 2)
すなわち、
4 = 2v − n
1− · · · − n
f+ 2f
と同値である。球面凸角形 P
1, · · · , P
fによる分割において、 S 上には e = e(T ) 個の辺が 現れるが、各辺はちょうど2つの球面凸角形の共通部分になっているから、
n
1+ · · · + n
f= 2e である。こうして、等式
4 = 2v − 2e + 2f
が得られる。両辺を 2 で割ると定理の公式になる。 □ オイラーの多面体定理の平面グラフを用いた「別証明」を与えておこう。凸多面体から 次のようにして、平面グラフを作ることができる。 T を凸多面体とし、その 1 つの面 F を 選ぶ。 F は凸 m 角形であるとし、平面に凸 m 角形を描く。この平面上の凸 m 角形の内 部に、面と面の隣接関係が T におけるものと同じになるように、辺を描いていく (F に隣 接する辺から順次描いていく ) 。
A
F B C
A B
C D
E F
D
E F
T G
こうして、凸多面体 T から平面グラフ G ができる。ここで、平面グラフとは、有限個 の単純弧 ( 自己交差点を持たず、閉じていない曲線 ) からなる集合で、次の条件を満たすも ののことをいう。
(i) 単純弧同士は端点以外で共有点を持たない。
(ii) 単純弧同士が共有点を持つときには、その共有点はそれぞれの端点だけである。
(iii) 単純弧の端点は必ず別の単純弧の端点になっている。
平面グラフ G を構成している個々の単純弧を G の辺と呼び、辺の端点になっている平 面上の点を G の頂点と呼ぶ。平面グラフ G のいくつかの辺によって囲まれる領域を G の 面という。 G の「外側」の領域は無限領域であるが、これも1つの面と考える ( 凸多面体 T の面 F に対応する ) 。オイラーの多面体定理を証明するためには、平面グラフ G に対し て、その頂点の個数、辺の個数、面の個数をぞれぞれ v(G), e(G), f(G) とおいたとき、
(1.9) v(G) − e(G) + f(G) = 2
となることを示せばよい。この等式を面の個数に関する数学的帰納法で証明しよう。
面の個数が最も少ない平面グラフは 2 つの面からなるグラフである。これは、1つの多 角形の周になっているような平面グラフである。 G が m 角形の周になっていたとすると、
v(G) = m, e(G) = m, f (G) = 2 であるから、 (1.9) は成立する。
E
F E F
E
i…
k を k > 2 なる整数とし、面の個数が k − 1 個の任意の平面 グラフに対して、 (1.9) は成り立っていると仮定する。 G を面の 個数が k 個の平面グラフとする。 G において、2つの面 F
1, F
2が右図のように、有限個の辺 E
1, · · · , E
iを挟んで隣接してい るとする。このとき、 G から E
1, · · · , E
iをとり除いて得られる 平面グラフを G
′とする。 G
′においては、 F
1, F
2が1つの面に なるから、 f (G
′) = f(G)−1 を満たす。よって、 G
′に対して帰 納法の仮定が使える。 v(G
′) = v(G) − (i − 1), e(G
′) = e(G) − i であるから、
v(G) −e(G) + f(G) = (v(G
′) + i−1)− (e(G
′) + i) + (f (G
′) + 1) = v(G
′) −e(G
′) + f(G
′) = 2 を得る。こうして、 k 個の面を持つ平面グラフに対しても (1.9) が成り立つことが示され
た。 □
§ 2. オイラーの多面体定理の応用
凸多面体であって、すべての面が合同な正多角形からなり、各頂点のまわりが合同 (= 各 頂点から同じ本数の辺が出ていて、隣り合う辺同士の間隔が一定 ) である凸多面体を正多面 体と呼び、面が2種類以上の正多角形からなり、各頂点のまわりが合同 (= 各頂点から同じ 本数の辺が出ていて、多角形の配置が同じ ) である凸多面体を準正多面体と呼ぶ。
上の5つの正多面体を総称してプラトンの正多面体と呼ぶ。準正多面体の中でもっとも
有名なのは、サッカーボールの形状に使われている、準正 32 多面体であろう。
準正 32 多面体は 60 個の頂点を持ち、面は正5角形と正6角形の2種類からなる。準正 32 多面体はまた、それが C
60フラーレンと呼ばれる物質の分子構造に現れることからも注 目される。 C
60フラーレンは、準正 32 多面体の各頂点に炭素原子を 1 個づつ配した球殻上 の構造をしている。この物質は、炭素原子が結合する上で極めて安定な構造をしている一 方で、化学反応性に富むことから、幅広く研究・開発がなされている。
ところで、炭素と言えば鉛筆の芯を思い浮かべる人も多いと思う。その主成分であるグ ラファイトは、6角形が並んだ構造を持つ、シート状の物質である。
では、このグラファイトシートを丸めた形状の(つまり、 C
60フラーレンのような球殻 上の構造を持つ)炭素分子は存在し得るだろうか?その答えは、オイラーの多面体定理を 使って、導き出すことができる。
定理 2-1 正多面体は、正 4 面体、正 6 面体、正 8 面体、正 12 面体、正 20 面体の5種 類だけである。
( 証明 )
T を正 n 角形からなる正多面体とする。各頂点から q 個の辺が出ているとする。 v = v(T ), e = e(T), f = f (T ) とおくと、オイラーの多面体定理から、
(2.1) v − e + f = 2
が成り立つ。各頂点から出ている辺の個数を単純にすべて足すと、1つの辺を2回ずつ数 えたことになるから、
(2.2) vq = 2e
が成り立つ。また、各面の辺の個数 (= n) を単純にすべて足すと、やはり、1つの辺を2 回ずつ数えたことになるから、
(2.3) f n = 2e
が成り立つ。 (2.1), (2.2), (2.3) を連立させて解く。 (2.1) に (2.2), (2.3) を代入すると、 2eq
−1− e + 2en
−1= 2 となるから、
e = 2qn
2n + 2q − qn を得る。したがって、
v = 4n
2n + 2q − qn , f = 4q 2n + 2q − qn
を得る。ここで、 v, e, f は自然数であるから、 2n + 2q − qn > 0 である。したがって、
(2.4) (n − 2)(q − 2) < 4
でなければならない。 n ≥ 3 であり、 q ≥ 3 である。
∵ )
もし、 q = 2 であるとすると、 (2.2) から v = e となる。これを (2.1) に代入する と、 f = 2 となる。凸多面体が2つの面しかないことになるが、その2つの面が辺ま たは頂点のみで共有点を持つことは不可能である ( 必ず内部で交わる ) 。故に、 q ≥ 3
とわかる。 □
不等式 (2.4) を満たす n, q ≥ 3 を列挙すると、 (q, n) = (3, 3), (3, 4), (3, 5), (4, 3), (5, 3) の5つのみである。このとき、面の個数 f は順に 4, 6, 12, 8, 20 である。 □ 上の定理の証明から、正多面体において現れ得る多角形は、正3角形、正4角形、正5 角形の3種類しかない。つまり、正6角形からなる正多面体は存在しない。このことは、6 角形だけからなる、 C
60フラーレンのような球殻上の構造を持つ炭素分子は存在し得ない ことを意味している。
補題 2-2 凸多面体 T に対して、
2e(T ) ≥ 3v(T ), 2e(T ) ≥ 3f (T ) が成り立つ。
( 証明 )
v = v(T), e = e(T ), f = f (T ) とおく。多面体の条件 (CP2) により、各頂点から出てい る辺の個数は 3 以上である。したがって、各頂点について、そこから出ている辺の個数を 数えて足し上げた総和は 3v 以上となる。一方、各辺はちょうど2つの頂点を持つので、各 頂点から出ている辺の個数を数えて足し上げると、2つの辺を2回ずつ重複して数えたこ とになる。したがって、不等式 2e ≥ 3v を得る。
次に、多角形は3個以上の辺を持つから、多面体の各面について、その辺の個数を数え
て足し上げた総和は 3f 以上となる。一方、多面体の条件 (CP3) により、各辺はちょうど
2つの面の共通部分になるから、各面の辺の個数を数えて足し上げると、2つの辺を2回 ずつ重複して数えたことになる。したがって、不等式 2e ≥ 3f を得る。 □ 注意:次の事実が知られている:整数 v, f ≥ 4 および e ≥ 3 に対して、 v = v(T ), e = e(T ), f = f(T ) となる凸多面体 T が存在するための必要十分条件は、補題の2つの不等 式とオイラーの公式が成り立つことである。
観察 C
60フラーレンにおいて、面の数は 32 個あり、そのうち、正5角形は 12 個、正6角 形は 20 個である。 C
60フラーレンは、正 20 面体からその各頂点を小さく切り落とすこと によって得られる。正 20 面体の頂点はちょうど 12 個あるが、その各頂点を切り落とすと 正5角形が生じて、全体で 12 個の正5角形になり、 20 個の面が 20 個の正6角形になるの である。
正20面体 準正32面体
問題 [11; c.f. 問題 98] 凸多面体 T であって、次の条件を持たすものは存在するか?
(1) v(T) = 104, e(T ) = 155, f (T ) = 53.
(2) v(T) = 104, e(T ) = 156, f (T ) = 54.
( 解 )
(1) まず、オイラーの公式 v(T ) − e(T ) + f(T ) = 104 − 155 + 53 = 2 は成り立っている。
次に、補題の不等式を満足しているかどうかを調べよう。
2e(T) = 2 · 155 = 310, 3v(T ) = 3 · 104 = 312
であるから、 2e(T ) ≥ 3v(T ) を満たさない。よって、 (1) の条件を満たす凸多面体は存在し ない。
(2) まず、オイラーの公式 v(T ) − e(T ) + f(T ) = 104 − 156 + 54 = 2 は成り立っている。
さらに、補題の不等式は
2e(T ) = 2 · 156 = 312 ≥ 3 · 104 = 3v(T ), 2e(T ) = 2 · 156 = 312 ≥ 162 = 3 · 54 = 3f (T)
も満足する。実は、 (1) の条件を満たす凸多面体存在する。このような凸多面体は、正 20
面体から準 32 面体を構成した方法を真似ることによって、作ることができる。これを説明
するために、頂点の次数という概念を導入する。凸多面体 T の頂点の次数とは、その頂点
から伸びている辺の個数のことをいう。凸多面体 T が次数 3 の頂点を持つとき、そのよう
な頂点の1つを「切り落として」新しい凸多面体 T
′を作ることができる ( 下図参照 ) 。
T´
T
すると、頂点の個数は 3 個増えて、 1 個減るから、 v(T
′) = v(T ) + 2 となり、辺の個数は 3 個増えるから e(T
′) = e(T) + 3 となり、面の個数は 1 個増えるから f (T
′) = f (T ) + 1 と なる。しかも、 T
′には次数 3 の頂点を持つ。したがって、このような操作を T
′に対して 再び行うことができる。このような操作を n 回続けて行って得られる凸多面体を T
(n)と おくと、
v(T
(n)) = v(T ) + 2n, e(T
(n)) = e(T ) + 3n, f(T
(n)) = f (T ) + n となる。 T が正 4 面体のときには、
v(T
(n)) = 4 + 2n, e(T
(n)) = 6 + 3n, f (T
(n)) = 4 + n
であり、 n = 50 のとき、 v(T
(50)) = 104, e(T
(50)) = 156, f (T
(50)) = 54 となる。こうし て、正 4 面体から出発して、次数 3 の頂点の切断を 50 回続けて行うと、 (2) の条件を満た
す凸多面体が得られる。 □
問題 [2; c.f. p.15] 次の条件を満たす頂点の個数が 12 の準正多面体にはどのようなものがあ るか?
(i) 面として現れる正多角形の種類は2種類である。その2種類を m 角形と n 角形と する。
(ii) 各頂点から出ている辺の個数は、頂点によらずに一定である。
(iii) 各頂点のまわりにあつまる正 m 角形、正 n 角形の個数は、頂点によらずに一定で
あり、それらの配置も同じである。
この問題を解決するためには、凸多面体の1つの頂点のまわりでの角度に関する考察が 必要になる。
補題 2-3 凸多面体 T において、1つの頂点 A を考える。この頂点のまわりに集まる T の面が F
1, · · · , F
lであるとする。各多角形 F
i(i = 1, · · · , l) の点 A の角度を α
iとおくと、
α
1+ · · · + α
l< 2π が成り立つ。
( 証明 )
この補題の主張が成り立つことは、次のように考えれば容易に想像できる。紙を1枚用
意して、その紙の上に一点をとり、その点を中心とする円板を切り取る。この円板の中心が
凸になるように、 「しわ」を作らずに、錐を作るには、円板の一部を切り取って、扇形にし なければならない。切りとってしまった分だけ、角度は 2π より小さくなるから、凸多面体 の1つの頂点のまわりに集まる多角形の角度の総和は 2π よりも小さくなる ( はずである ) 。
厳密に証明するには、次のようにする。頂点 A が直多角錐の頂点となるように、充分小 さな平面 P で T を切る。頂点 A からその平面へ下ろした垂線の足を H とする。1つの多 角形 F
iに注目する。 A から出ている F
iの辺と P との交点を X, Y とおくと、 α
i= ∠ XAY である。 α
i< ∠ XHY となることが示されればよい。
P
A
X H
Y
したがって、次のことが証明されればよい。
A A h
B C P
b
a
α
b
β
平面上に三角形 ABC があり、この平面に垂直で、
A から伸びる半直線上に点 P があるとする。 α =
∠ BAC, β = ∠ BPC とおくとき、 α > β となる。
このことを示す。角度だけを問題にしているので、
三角形 ABC は AB = AC を満たす二等辺三角形で あるとしても一般性を失わない。以下、 a = BC, b = AB = AC, h = PA とおく。三角形 ABC に余弦定 理を用いて、
a
2= 2b
2− 2b
2cos α が得られ、三角形 PBC に余弦定理を用いると、
a
2= 2(b
2+ h
2) − 2(b
2+ h
2) cos β が得られる。したがって、
cos β = h
2+ b
2cos α
b
2+ h
2を得る。 α > β を示すには、 cos β > cos α を示せばよい。よって、
h
2+ b
2cos α
b
2+ h
2> cos α
を示せばよい。上式は h
2+ b
2cos α > (b
2+ h
2) cos α と同値であり、これは、 h
2> h
2cos α と同値である。 cos α < 1 であるから、最後の不等式は自明に成り立つ。こうして、補題は
証明された。 □
( 問題の解 )
T を頂点の個数が 12 の準正多面体とし、 T における正 m 角形と正 n 角形の個数を それぞれ a, b とする。また、各頂点から伸びている辺の個数を q とする。 v = v(T ), e = e(T ), f = f (T) とおくと、 v = 12, f = a + b である。各頂点について、そこから出ている 辺の個数を数えて足し上げた総和を2通りの方法で数えて 12q = 2e, すなわち、 6q = e を 得る。また、各面について、その辺の個数を数えて足し上げた総和を2通りの方法で数え て am + bn = 2e を得る。さらに、オイラーの多面体定理により、 12 − e + (a + b) = 2, す なわち、 a + b = e − 10 を得る。こうして、連立一次方程式
(2.5)
6q = e,
am + bn = 2e, a + b = e − 10 を得る。
2 π m
2π m
π )
2
(
1
正